• 阪本順治監督×稲垣吾郞主演、長谷川博己×池脇千鶴×渋川清彦で贈る希望という名の物語。

    哲学的な想像力を掻き立てられる『半世界』と名付けられた映画は、阪本順治の26本目となる監督作となった。前作、『エルネスト もう一人のゲバラ』でのグローバルな世界観から翻り、地方都市に焦点を当てたドメスティックな本作は、阪本自らが書き下ろしたオリジナル脚本だ。そこに、世界は市井の人々の小さな営みでできているという監督の視点が込められている。主演に稲垣吾郎を迎え、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦という絶妙な演技で観る者を楽しませてくれる面々が揃った。諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる39歳という年齢の男三人の友情物語を軸に、複数のエピソードを交えながらやがて命の通った夫婦のドラマとしても結実していく。「人生半ばに差し掛かった時、残りの人生をどう生きるか」という誰もが通るある地点の葛藤と、家族や友人との絆、そして新たな希望を描く。撮影は2018年の2月に三重でクランクイン、長閑で風光明媚な南伊勢町を中心にオールロケを敢行した。第31回東京国際映画祭のディレクター陣らから絶賛されコンペティション部門観客賞を受賞した話題作だ。

  • 「こんなこと、ひとりでやってきたのか」。山中の炭焼き窯で備長炭を製炭し生計を立てている紘は、突然帰ってきた、中学からの旧友で元自衛官の瑛介から、そう驚かれる。何となく父から継いだ紘にとって、ただやり過ごすだけだったこの仕事。けれど仕事を理由に家のことは妻・初乃に任せっぱなし。それが仲間の帰還と、もう一人の同級生・光彦の「おまえ、明に関心もってないだろ。それがあいつにもバレてんだよ」という鋭い言葉で、仕事だけでなく、反抗期の息子・明に無関心だったことにも気づかされる。やがて、瑛介の抱える過去を知った紘は、仕事や家族と真剣に向き合う決意をするが・・・。人生半ばに差しかかった彼らが、次の人生をどう折り返すかを描きながらも、人は生きて死ぬ、だからこそ際立つ刹那な幸せをスクリーンに照射させたドラマだ。

  •  『エルネスト もう一人のゲバラ』『人類資金』『北のカナリアたち』など常に自己模倣に陥らず、家族愛から歴史の裏に隠された真実まで幅広いテーマで、人間の尊厳とリアリティを追求してきた監督・阪本順治。根底にあるその眼差しは温かく、ときに厳しく、崇高だ。そんな阪本組への参加を熱望する俳優は多く、初タッグとなる役者陣が集結した。主演には、時代を通してエンターテイメントシーンを牽引してきた稲垣吾郎が挑む。『十三人の刺客』『おしん』などの怪演から、本作では自然な佇まいで天性の映画俳優としての演技力をいかんなく発揮する。「土の匂いのする役を稲垣に」という監督の狙いが見事に嵌り、煤だらけで家族を養う土着した炭焼き職人・紘として、かつて観たことのない姿を披露する。故郷に帰ってくるワケありの同級生で元自衛官・瑛介には、NHK朝の連続ドラマ小説『まんぷく』、2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主演に決定し名実ともに日本を代表する俳優となった長谷川博己が熱演する。紘の妻・初乃には『ジョゼと虎と魚たち』『そこのみにて光輝く』など数々の名作に出演してきた演技派女優の池脇千鶴が絶品の存在感を放つ。紘のもう一人の同級生・光彦には、あらゆるジャンルの映画からラブコールを受ける実力派俳優の渋川清彦が演じる。さらに紘の息子・明に大抜擢された杉田雷麟、阪本組では常連の石橋蓮司、さらには小野武彦、竹内都子らが物語に笑いとスパイスを与える。役者陣の絶妙なアンサンブルと阪本監督ならではの無二の作風と独創的なストーリー展開で、愛とユーモアと驚きといった人生で必要なもの全てを詰め込んだ希望に満ちた作品となった。

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