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とある地方都市。そのまたさらに郊外に暮らす高村紘とその妻、初乃、息子の明の家族は、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭することを生業としている。中学からの旧友で、自衛隊員として海外派遣されていた沖山瑛介がある日、何の前ぶれもなく、町へ帰ってきた。どうやら瑛介は妻子と別れて故郷に一人戻ってきた様子。紘は、同じく同級生で中古車販売を自営でやっている岩井光彦にも声を掛け、十数年ぶりに3人で酒を酌み交わす。
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翌日、廃墟同然だった瑛介の実家を掃除し、住める状態にする3人。海外での派遣活動で瑛介が何か心の傷を負ったのでは?それが妻子と別れ、故郷に戻ってきた原因になったのではないかと、感じる紘と光彦だが、直接聞くことも憚られ、どうすることもできない。
紘の息子、明は反抗期の真っ最中で、どうやら学校でイジメも受けている様子だが、紘はそれに頓着していない。「おまえ、明に関心もってないだろ。それが、あいつにもバレてんだよ」 鋭いことを光彦に言われハッとする紘。 -
数日後。「オレの仕事、手伝えよ」
過去から脱却できずにいた仕事のない瑛介を巻き込んで一念発起する紘。
炭材のウバメガシをチェーンソーで伐採し、枝打ちし、短く切断する。窯に火を入れ、炭を掻き出しては灰を掛け、それを何度も繰り返す。出来た炭を段ボールに詰め営業し、新規の顧客開拓を目指す―。
「こんなこと、ひとりでやってきたのか」
と紘の仕事ぶりを見て驚く瑛介。
これまで感じたことのない張り合いを感じ始めた紘。そんな父を見る明の目にも、変化が現れかけ、それは何もかも順調に向かい始めているように見えていた・・・。